『マッドマックス:フュリオサ』こういうのが観たかった

『マッドマックス:フュリオサ』、個人的には期待していたものとは違う作品だった。

じゃあ自分はどういうものを求めていたのか。その言語化を試みてざっと展開を書き出していったら、極私的ながら思いのほか批評的な行為になった。その記録。ほとんど箇条書き。
ヒラギノ游ゴ 2024.06.04
誰でも

母を殺した仇・ディメンタスに連れ去られた少女・フュリオサ。

故郷の妹と離れ離れになり、人血ソーセージを供給するための血液奴隷として地獄の日々を送る。

奴隷から血液を搾り取るための施設・人間農場に囚われる生活。ある日、同じ血液奴隷の中に歳の近い少女を見つける。

彼女は恵まれた体格、類稀な身体能力を持つ。フュリオサのように技術はないが、十分以上に戦える体。しかし生まれたときから人間農場にいる彼女は外の世界を知らない。

そのため反逆する発想自体がない。次第にフュリオサに感化されていくが、一緒に戦おうと誘うと断られてしまう。学ぶ機会からスポイルされ無気力に体制に従っていたが、少しずつ知識を蓄え自己改革していく人々を象徴するキャラクター。

数年後、フュリオサは単独での脱走を計画。

あと一息のところを天獄(監獄長)に捕えられそうになるが、窮地をあの無気力だった奴隷仲間に救われる。

以後、2人はバディとなり、ディメンタスが作り上げた都市国家の地下に潜る。

助け合いながら復讐の機を伺い、戦闘能力を鍛え続ける2人。

数年後、復讐決行の日。

ここから演者交代。フュリオサは子役→アニャ・テイラー=ジョイに、バディは子役→ブリアナ・ヒルデブランド(『デッドプール』ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド役)に。

出世してディメンタスの腹心となったかつての人間農場の天獄に追い詰められるが、間一髪のところを生き別れの妹・ヴァルキリーに救われる。

ヴァルキリーの演者はジェナ・オルテガ(『ウェンズデー』のウェンズデー役)希望。

3人がかりで因縁の相手である天獄を仕留める。

ヴァルキリーが生い立ちを語る。

フュリオサと生き別れて以降、ヴァルキリーは周囲の大人から姉のことは忘れるよう言い聞かされ、理想郷で恵まれた日々を過ごしていた。そんな自分の境遇に罪悪感を抱えて育つ。恵まれた環境で育ちながらも、そうでない境遇の人に対する連帯意識を手放さない人々を象徴するキャラクター。成長したある日、姉を救うため、自身のあり方に納得するため出奔。

理想郷から地獄に連れ去られた女、

地獄で生まれ育ち無気力を植えつけられていた女、

理想郷の外の世界を知らないことに自責の念を覚え旅立った女。

異なるバックボーンを持った女3人が結束。

3人が横並びで荒野を歩くシーン欲しい。

3人は奮闘の末ディメンタスを追い込む。しかしフュリオサ以外の2人は凶刃に倒れ、逃走を許してしまう。

魔改造バイクで逃げていくディメンタス。しかし、それを横切るように行軍する超大規模な魔改造トラック軍団に踏み潰され呆気なく絶命。

トラック軍団を率いているのはイモータン・ジョー。ディメンタスが率いたバイク軍団の何十倍もの勢力を従える、次元の違う悪。

侵略のための遠征の帰り道、たまたま進行方向を横切ったディメンタスをこともなげに轢いていったのだった。

呆然とするフュリオサ。自分の手で復讐できなかった無力感に打ちひしがれる。

しかし、イモータン・ジョーが子産み女やミルキング・マザーという形で女たちを奴隷として扱っていることを知る。かつて血液奴隷であった自分と重ねる。

そして、自分が本当に果たしたかったのは個人的な復讐ではなく、家父長的なシステム自体の破壊だと気づく。

ディメンタス個人を自分の手で殺せるか否かは本題ではなかった。ディメンタスも含むこの世界の歪み、搾取の連鎖、権威勾配といった社会構造が自分たちの本当の敵であった。

決意を新たに、フュリオサはイモータン・ジョーの配下として組織に潜入する。

そして物語は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』へ。

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